速記 「瀬戸口楽長を語る」
出席者 松島中佐 山口少佐 内藤楽長 藤咲楽長 京極氏 青砥氏 吉元氏
滝村 小林 宥岡(?) 伏水 井上
松島
実は今度五月の海軍記念日頃に、軍艦行進曲と愛國行進曲を主題とする映画についての御相談であります。私も色々考えましたが、私の希望としましては、軍艦行進曲が出来てから愛國行進曲が出来る間の帝国海軍の移り変わりをバックとして、一面軍楽隊の変遷を描き、いはば一つの音楽映画にし、且つ又海軍の普及映画になる事を望ましいと思って居ります。只これを俎立てる上に劇による必要があるので、そうするとやはり主人公をつかまえて来なければならない。それについては瀬戸口さんをつかまえる事はさしさわりがあるので、意識的に誰か探してほんやりと中心人物をもつて来て、これが海軍なり軍楽隊の変遷を語るようにしたいと思って居ます。
私考へたんですが、中心になるのは劇的の人物でなければなりませんので、それを一つ熱烈に音楽の好きな人又海軍が好きな青年をつかまえて来て軍楽隊に入る。それが病気になって一度休んで其の間に意識的に瀬戸口さんの御厄介になり、その後も音楽に憧れを持って居る。それが遂に愛國行進曲に結ばれて来るという風にしたらどうかと思います。橋本さんがドイツから帰られて間もなく、丁度あの間に日露戦争があり、三十三年に北清事変があり、海軍が急激に発展した頃なんです。それから愛國行進曲と現代の事変に結びつけるという風にしたら面白いと思います。言って見れば軍楽の父を語るというような事になりますね。
瀧村 瀬戸口さんが軍艦マーチを作る前後はどいういふ時代でしたでせうか。
松島 三國干渉でひどい目に会いまして、臥薪嘗胆時代です。みんなその気持ちでやってた時代で、造船術でも何でも、総てか発展したんです。
山口 この間、ある座談会でも出たんですが、今が非常時だ非常時だと云っても、割合に感じていない。もう一度、あの臥薪嘗胆時代にかえって●れ●ば、それだけで充分だ、という意見を云ってましたが、それほど当時は皆が真剣だったのです。